下請法の役割と意義
資本主義経済における、公正かつ自由な商取引を保護する目的として、独占禁止法(以下「独禁法」)があります。下請法は、この独禁法を補完し、中小企業を保護することを目的とする法律として位置づけられます。
中小企業は、取引の相手先(親事業者)からの不当な要求等から自社を守るためにも、下請法の内容を理解する必要があると考えられます。
下請法は、親事業者が下請事業者に対して、その強い立場を利用した不当な行為を行うことを禁止して、下請事業者を保護するために、独禁法のうち特に優越的な地位の濫用規制を補完するものとして制定されました。独禁法における優越的な地位の濫用を認定するためには、独禁法の目的やその性質上、取引当事者間の交渉経緯や不利益の内容などの総合判断が必要になるため、実際に公正取引委員会が優越的な地位の濫用を認定するまでの期間に一定程度の時間を要してしまいます。そこで下請事業者を迅速に保護することを目的として、下請法では、違反要件に該当するか否かをある程度形式的に判断し、簡易かつ迅速に執行できるようにしました。
例えば、発注時に決めた下請代金を親事業者が事後的に減額する行為は、たとえ下請事業者の同意があっても、下請法で禁止する不当な減額に該当して違法となります。
民法等の規定によれば、契約当事者間双方が納得して合意した契約内容であれば、法的な問題はないと解することができますが、親事業者との関係性において、立場の弱い下請事業者は、不利益な内容であっても親事業者の意向に従わざるを得ない状況にあることを踏まえて、下請法では下請事業者を簡易迅速に救済するための運用がなされます。
親事業者の視点からも
下請法が下請事業者を保護する目的の法律であることから、下請事業者視点からの記述となりましたが、当然に自社が親事業者の立場になることもあり得ます。ですから、実際に商取引を行う企業は、その規模にかかわらず、適正な取引を実現するために、少なくとも下請法の適用基準や、下請法で親事業者に義務付けられる行為や禁止行為の内容について、十分に理解をしておく必要があるでしょう。
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